一眼レフカメラを購入したのは独立して間もない頃。
それまで私にとってカメラは「チラシに掲載する写真を撮るために必要」
そのくらいの認識だった。
それが撮影メインのお仕事を依頼されるようになってから写真を撮る意味が変わった。
被写体は食品。パッケージに入っているもの。
インスタグラムに載せる写真なのでただ撮ればいいというのではなく「映え」を意識しなければならない。
初めての撮影は今でも忘れられない。
「お惣菜を撮ってもらいます。」
そう言われて華やかなお弁当を想像していた私は現物を見て絶句した。
大きな厚焼き玉子がドンと入っているプラスチックのケースを渡された。
初めての撮影で緊張しているのに、被写体が無骨な厚焼き玉子。
映えるような小道具らしきものもない。
「インスタグラムの反応が悪かったらどうしよう…」
そんな不安を抱えながら撮影に臨んだ。
どうやったら美味しそうに撮れるか格闘した。
納得が出来ず、気がついたら2時間以上が経っていた。
向き合っているうちに被写体と目が合うようになってきた。
パシャッ。
撮れた!
今でも忘れない。
「被写体と目が合う」という感覚はこの時生まれた。
あの時から今まで何百という商品を撮り続けてきた。
その積み重ねを最近少しだけ振り返ることができるようになった。
「今まで一緒に頑張ってきたね。」
NikonD7500とは、月並みの言葉では言い表せないほどの濃い関係になった。
最近はファインダーを覗いて少し迷っていると、どう撮ったら良いか教えてくれている気がする。
気がつけば息もぴったりに。
使い始めてから2年以上経つのに絶えず新たな面を見せてくれる。
飽きることなく新鮮な気持ちを与え続けてくれる最高のパートナーだ。
これからもずっと一緒に新しい景色を見ていきたいと思う。
2021.5